今回は『弔いの値段』という本をきっかけに、
「弔い」と「お金」、特にお布施の問題について考えてみたいと思います。

この本は、浄土宗の僧侶でありジャーナリストの鵜飼秀徳さんと、日本経済新聞社の
大久保潤さんの共著です。

私自身、お坊さんという立場もあって、「寺院消滅」や「絶滅する墓」といった著書も含め、よく読ませていただいています。


お布施の平均って本当に参考になるのか?

お布施の金額については、ネットで「平均」を調べることができます。

ですが実際に、
「じゃあ自分はいくら包めばいいの?」
となると、不安になる方がほとんどではないでしょうか。

今は葬儀の形も多様です。

  • 家族葬
  • 一日葬
  • 直葬

同じ「葬儀」といっても、内容や日数が違えば金額も変わります。さらに、

  • 宗派の違い
  • お寺との関係性
  • 法名(戒名)の有無

これらが重なることで、
一律の金額というものは存在しません。


本来のお布施の意味とは

本来の「布施」とは、

見返りを求めず、他者のために施すもの

です。

仏教の教えが続いていくことを願って出すもの、それが本来の意味です。ただ現実には

  • 僧侶への謝礼
  • 葬儀のお礼

という感覚で受け取られていることも多いと思います。それもまた、今の時代の自然な受け止め方だと思います。


実際の葬儀費用のリアル(本書より)

本書では、大久保さんが9年間で4人の親御さんを見送った実例が紹介されています。

● お母様(無宗教葬)

  • 葬儀社:70万円
  • 接待費:40万円
  • 納骨・法要など:30万円

👉 合計:約150万円

● 奥様のお母様(真言宗)

  • お布施:約32万円
  • 納骨時:約6万円

👉 合計:約195万円

● 奥様のお父様(コロナ禍・無宗教)

👉 約215万円

● ご自身のお父様(無宗教+納骨のみ仏式)

👉 約130万円

葬儀社への支払いも含めてなので、このように見ていくと、「極端に高額」というわけでもなく、多くの方が「妥当」と感じる範囲とも言えます。

それでも半数以上が「納得していない」

全日本葬祭業協同組合の調査(2020年)では、

👉 お布施に納得していない人:53.8%

つまり、半分以上の方がモヤモヤしているのが現状です。

地域によってここまで違うお布施

本書では地域差についても触れられています。

  • 東北・東京:50万円前後
  • 関西・中核都市:20〜30万円
  • 沖縄・山陰:5〜8万円

👉 最大で約10倍の差があります


現場感覚としての金額(石川県の場合)

私自身の経験でいうと、

● 伴僧(導師をサポートする僧侶)

  • 2万円〜7万円
    (多いのは3万円・5万円)

● 導師(菩提寺の僧侶)

  • 10万円〜20万円程度

ただしこれはあくまで一例で、本当にバラバラです。

浄土真宗の考え方(ここが大きな違い)

浄土真宗では、

  • 魂を送る「引導」は行わない
  • 死後の行き先を操作する考えがない

つまり、

👉 お布施=魂を救う対価ではない

では何かというと、 故人とのご縁に感謝し、仏法に出会う場、これが葬儀の意味になります。

法名(戒名)は必要なのか?

浄土真宗では「戒名」ではなく「法名」と言います。

法名とは、仏弟子として生きる名前です。

金額の目安(現場感覚)

  • 生前授与:1万〜1.5万円
  • 葬儀時:0〜3万円
  • 院号:8万円程度

お寺によって筆料をいただいたり、考え方に少し差があるので少し幅があります。

お布施はなぜ不透明なのか

本書では重要な指摘があります。

お布施が一律でないからこそ、
富める人が多く払い、
困っている人が少ない負担で済む

これは非常に大切な考え方だと思います。

では金額は明示すべきか?

アンケートでは、

  • 明示すべき:約68%
  • 反対:約11%

多くの人が「明示」を望んでいます。

理由はシンプルで、葬儀が「サービス化」しているからです。

私の考え(正直なところ)

私は、必ずしも明示すべきとは思っていません

なぜなら、

  • 払えない人からはいただく必要はない
  • 本来は「お気持ち」だから

ただし問題は、それを言える関係が築けていないことだと思っています。

弔いとは何か

本書の中で印象的な言葉があります。

弔いとは、故人との対話の中に求める安らぎ

これはその通りだと思います。

  • 思い出の場所を巡る
  • 一人で語りかける

それも立派な弔いだと思います。

それでも「葬儀」が必要な理由

人は、「区切り」がないと前に進めないだからこそ、

  • 家族が集まり
  • 手を合わせ
  • お別れをする

この時間が、心を整えてくれます。

後悔しないために大切なこと

一番大事なのは亡くなる前に考えておくことです。

  • 葬儀社を決めておく
  • お寺との関係を持つ
  • エンディングノートを書く

これだけで、費用も不安も大きく減ります

まとめ|弔いの値段に正解はない

「弔いの値段はいくらです」

と全国共通の答えを出すことはできませんが、

  • 地域
  • 宗派
  • お寺との関係

これをもとに、
自分なりの納得できる形を考えることはできるかと思います。

お布施の問題は「お金」の話でもありますが、
本質は「人と人との関係」です。

お寺も、もっと信頼される存在でなければならないと思いますし、
皆さんにも、ぜひ一度お寺に話を聞きに行ってほしいと思います。

きっと、寄り添ってくれるお寺はたくさんあります。

ではまた!

ABOUT ME
まんじ
石川県の終活アドバイザー。葬送儀礼について発信しています。