皆さんは火葬場のお休みの日をご存じですか?
多くの方ののイメージではおそらく友引の日がお休みなのでは?という印象をお持ちなのではないでしょうか。
しかし私のの住んでいる石川県の白山市では火葬場のお休みに友引は関係ないんです。
一般的にこの日にお葬式をすると友人を連れていくから、お葬式をしないということが慣習としてありますが、この友引は元々仏教が関係しているわけではありません。
六曜
六曜を簡単に説明しますと、1カ月の約30日を友引きとか仏滅、大安などの6種類の吉日とか凶日にわけて呼んでいるんですね。旧暦の元旦を先勝(せんしょう)として、友引、先負(せんぷ)、仏滅、大安、赤口(しゃっこう)の6パターンが繰り返される考え方です。
先勝:午前が吉で午後が凶。先んずれば勝つ日。
先負:先勝の逆で、午後が吉で午前が凶という日。
大安:めでたい日、何をやっても成功する日。吉日。
赤口:凶の日。正午だけ吉の日。
仏滅:大安の逆。凶の日。
そして友引は元々は共に引く、共通の共という字で「共引(ともびき)」と書くんですね。この日に勝負事をしても引き分けとなるといった意味合いです。良い日悪い日、また1日の中で良い時間悪い時間が分けられているんですね。
しかし、陰陽道などの他の思想にこの友に災いをもたらすという意味での「友引き」という考えがあって、それと混同されて六曜でも、共引から友引へと字が変わり、友人を連れていくというイメージが定着しているということです。
石川県の火葬場ではこの友引の日はお休みになってないところのほうが多いです。石川県に多い浄土真宗という宗派の宗祖である親鸞聖人が、「日に良い日、悪い日を決めない」という考えをお持ちだったことが影響していると考えられます。
火葬場の休みの日
白山市
僕の住んでいる石川県白山市には火葬場は2つあります。
松任斎場と白山郷斎場です。
僕もたまに行くところではありますが、改めて休日を聞いたりしたことはなかったです。
調べてみるとまずは松任斎場は1月1日と8月15日となっています。お正月とお盆ですね、ここらへんは8月盆なので。15日だけだと休み少ないですよね、職員の方も交代で入っているんだと思いますが、人が亡くなるのに曜日も日にちも関係ありませんから、こうやって火葬場で勤めて下さっていることには感謝です。
白山市の山手の方にある白山郷斎場も、同じでした。1月1日と8月15日です。友引は全く関係ないということですね。
金沢市
次は金沢市を見てみます。金沢市も2つの火葬場があります。
金沢南斎場と金沢東斎場です。休みの日をみてみますと、1月1日と土曜日または日曜日となっています。
この2つの斎場は土日が同じ日の休みにならないように調整されて、週に1回土日のどちらかがお休みとなっています。
例えば2023年の12月ですが、金沢東斎場が12月2日の土曜日が休みならば、金沢南斎場は12月2日の土曜日はやっていますし、反対に金沢東斎場は12月3日の日曜日に業務をおこなっていて、金沢南斎場はお休みとなっています。
毎週そのように土日にどちらかは営業しています。火葬場が休みだとお葬式も出来ませんのでそういう配慮がされているのでしょう。
金沢市も友引の影響はないということですね。
金沢市はお盆が7月ですので、特に8月15日はお休みになっていないということでしょう。
冒頭に申しましたが、石川県は親鸞聖人を宗祖とする浄土真宗のお寺や門徒が多い地域です。浄土真宗門徒は「門徒物忌み知らず」といわれることがあります。祟りとか迷信とか、祈祷とか、そういったものに頼らない生き方をしているという浄土真宗門徒を周りが呼んだものです。念仏以外知らない人たちだと揶揄された言葉だとも言われますね。
友引きの日でも火葬場が営業しているのは、そういった考え方もこの地域では影響しているのではないかと考えています。
河北郡
続いては石川県でも能登地方に近くなってきます河北斎場という斎場なんですが、こちらは同じ石川県でもこれまで紹介してきた2つの斎場とは違います。
休みの日を見てみますと、1月1日と8月15日、これは白山市と変わらずですがこれに加えて友引の日がお休みになっています。
浄土真宗門徒でも友引は気になる
親鸞聖人を宗祖とする浄土真宗門徒の多い石川県ででは友引のような迷信にとらわれないと言いましたが、1人1人の信仰は今では様々です。浄土真宗門徒と言ってもお葬式だけのお付き合いしかなかったりして、浄土真宗の考え方は決して代々に受け継がれていないという状況もあります。皆さんのおうちでも、家族皆が同じ信仰ではないというところもあるのではないでしょうか。
そうすると、一般的な考え方である友引にはお葬式を避ける方もまだまだおられるということです。
そして、火葬場で勤められている方のお休みの都合もあります。慣習、迷信でお葬式をされる方が少ないのであれば、火葬場をお休みとさせてもらっているということもあるのではないかと思っています。
運営する母体によって休みの日は違います。石川県では1つの市、もしくは複数の市が合同で火葬場を運営しているので、その運営しているところの考えによってお休みが設定されています。
昔お参りに伺ったおうちで、奥さんが
というふうに話されていました。
僕も「浄土真宗ではそういう日に良し悪しはつけないんですよ」とお話しましたが、「そうなの?」と決して納得いったというお顔はされていなかったということがありました。
昔からそう信じてきたことは大丈夫ですよと言われたって簡単には考えを変えられません。例えば友引人形というものがあって、友の代わりにその人形を入れればその人形を代わりに連れて行ってくれるというものです。これはそういった風習を信じない浄土真宗では必要ないわけです。
しかし私たちは「もしも」が怖いのです。自分も含めてですが。だから「必要ないですが、もし入れる事で安心されるようであれば、入れて下さい」と言ったこともあります。
人形を入れずに、その後もしものことがあったとき、それでも友引に葬儀をしたこととは関係ありませんと言ったって、後悔が残ってしまう。
その方の信じ方によりますが、言い切れない僕も情けないんですけどね。僕の大丈夫ですよよりも、人形を入れる安心感のほうが勝ることもありました。
だから浄土真宗の盛んな地域であっても、友引だから葬儀の日を1日ずらすということはあります。
石川県のその他斎場
そして全ては紹介できませんが、簡単に他のところの火葬場のお休みもご紹介します。石川県の小松市にある火葬場「小松加賀斎場さざなみ」のお休みの日は1月1日、8月15日に加えて、毎月第1月曜日ということになっています。
職員の方のお休みやメンテナンスなどの関係です。こちらも友引きは関係ないですね。
石川県の加賀地方ではこの河北斎場を除けば、他の火葬場では友引でも通常業務をしています。能登地方の火葬場は行ったことがないので調べてみましたが、1月1日はお休みとなっていますが、友引は関係なさそうです。
能登三郷斎場という能都町の火葬場は、友引きは関係ないと電話したら答えて下さいました。お忙しい中申し訳後御座いません、ありがとうございます。
使用状況などを見てみても、毎日埋まっている週もありますし、1月1日だけなのでしょう。
同じ能登方面では羽咋斎場、志賀斎場といった場所でも、友引は関係ないというふうにHPに書いてあります。
東京、名古屋などでは友引はお休みのところが多いということをお聞きしますが、大阪の大きい斎場なんかは休みが1月1日だけというところもありますし、思っているよりも友引きでも葬儀、火葬をされるようになっているのかもしれませんね。
お一人お一人友引について思われてるは違いますが、時代としては今は都会では火葬場は順番待ちが長いと言われる時代です。
お休みも必ず必要ですが、働かれている職員の方の人数が足りるのならば火葬場も1月1日以外は営業となる可能性はあると思っています。
葬儀に参列される方も減ってきたという事情もあって、友を引いていくということを気にされる方も少なくなっているのかもしれませんね。僕は浄土真宗の僧侶なのでそう感じていますが、いや私は友引にはどうしても出来ませんという方はおられるとは思いますが。